コラム

  • 個人向け

競売物件への投資はあり?競売の基礎情報と覚えておきたいリスク

競売物件への投資はあり?競売の基礎情報と覚えておきたいリスク

不動産投資を考えている人のなかには、安く不動産が手に入ると、投資ビジネスの一環として競売物件に興味を持っている人もいるでしょう。

本記事では、不動産投資として競売物件の取得はありなのか、その特徴とリスクについてお伝えします。

競売とは

競売とは、住宅ローンを含めた債務の未納が続いている債務者の担保となっている不動産を、債権者の申立てによって裁判所が差し押さえ、裁判所が公的なオークションを実施して売却することを指します。簡単にいうと、借金が払えなくなった人の家を差し押さえ、売却することで借金の弁済に充てるという、強制的にお金を回収する手続きです。オークションでは、最も高い金額で入札した人が落札、つまり物件を手にできます。

一般的な不動産購入との違い

一般的な不動産の購入では、宅地建物取引業法に基づき、不動産の所有者と購入者は不動産仲介業者を介して取引を行います。購入者は、不動産の購入目的を問わず消費者としてみなされ、法律の保護を受けます。

一方で、差し押さえられた不動産「競売物件」の取得は、民事執行法に基づきます。裁判所によって、所有者が移転されるものであり、商取引とはみなされません。よって、一般的な不動産の購入と違い、競売物件の取得者は宅地建物取引業法による消費者に対する保護が適用されなくなります。競売物件の取得については、落札者が全責任を負うのです。クーリングオフや手付解除といった制度は利用できません。

不動産の競売の特徴

続いては、競売物件ならではの特徴を紹介します。競売での不動産取得をビジネスとして行おうと考えている人は最低限知っておきたい内容です。

競売物件の情報が公開される

差し押さえられた物件は、競売にかけられる際に下記の3点が公開されます。
・現況調査報告書
・評価書
・物件明細書

裁判所によって提供される不動産の情報はこの3点のみです。裁判所書記官や執行人、不動産を鑑定した評価人が、対象の不動産をしっかり調査した結果が記載されており、40ページほどあります。

ただし、記載されている調査結果は一般的に半年~1年前のものが多く、競売物件の取得を目指すのであれば、自身で現在の状況や価値について調べなおす必要があります。

通常は市場に出回らない物件が含まれる

競売で出品されるのは、都市部や住宅地の物件ばかりではありません。狭小物件や変形地、農地、僻地物件など多種多様で、あまり目にすることがない物件も含まれます。きちんと物件情報を確認しないと、取得しても売れない不動産を所有してしまうことになりかねません。

一般的に、投資目的で不動産を購入するとなると、不動産仲介会社は投資向きの不動産を選別して、提案してくれます。一方、競売物件は投資向けの不動産とは限らないため、自身で十分に収益を得られる不動産であるかを判断しなければなりません。

一般的な不動産よりも割安になる

競売物件を取得するプラスの特徴は、一般的な不動産相場と比べると3割程度安く取得できるということでしょう。優良な物件を安く入手できれば、大きな利益を上げやすくなります。

ただし、競売物件が安いのは、内覧ができず、落札までの時間が短いという一面があることが関係しています。一般的な不動産購入よりもハイリスクであるため、安くなっていることを理解しなければなりません。

競売物件の取得で考えられるリスクとは?

競売物件には、一般的な不動産では起こりにくいトラブルが発生します。トラブルが起こった場合でも法律による保護がないため、リスクを理解したうえで本当に投資するか慎重な判断が求められます。

入居者に立ち退きを拒否される

競売物件の場合、入居者がいる状態で不動産が売りに出されることがよくあります。債務者と入居者が同一人物だった場合でも、入居者が貸借人だった場合でも、競売物件の取得後に立ち退きを拒否される可能性があります。

債務者と入居者が同一人物だった場合、強制執行により立ち退き手続きを取ることができますが、強制執行までは2ヶ月ほどかかります。また、入居者が貸借人だった場合、貸借人が不利益を被らないよう、明け渡しには6ヶ月の猶予を設ける制度があります。

競売物件の取得では、不動産の取得後すぐには運用できないことがほとんどであると認識しておきましょう。

運用までに多額の費用がかかる

取得した不動産がすぐに運用できる状態にない場合、運用まで持っていくために多額のコストがかかることがあります。たとえば、建物や設備の老朽化が進んでおり、そのままでは収益を得られるだけの家賃で貸し出せないケースや、債務者が残していった大量の家財やゴミの処分費用がかかったりするケースなどです。

一般的な不動産購入の場合、購入時に分からなかった瑕疵が見つかった場合、売主が瑕疵部分を補償する責任を負います。一方で、競売物件の場合、たとえ瑕疵が見つかったとしても修繕費用は全て落札者が負担しなければなりません。

同様に、債務者が屋内に大量の家財やゴミを残して行った場合、処分にかかる費用を負担するのは落札者です。

つまり、老朽化が激しい不動産やゴミ屋敷状態の不動産を取得してしまった場合、運用を始めるまでに追加で余分な費用が発生するリスクがあるのです。

競売物件でのビジネスはハードルが高い

競売は、通常よりも安く不動産を手にできる方法の1つですが、落札者は消費者とはみなされず、トラブルが発生しても法律で守ってもらうことができません。そのため、一般人が投資ビジネスとして気軽に手が出せるものではないことを認識しておきましょう。

一般的な不動産を購入したほうがリスクは少なく、収益化もしやすいので、これから不動産投資を始めたいという人は、無理に競売物件に手を出さないほうが無難です。もし、落札のための資金が不足しているという場合は、不動産担保ローンをスポットで利用するなどリスクが低い方法で資金を調達するのがおすすめです。